3年I組の伊藤伸一です

同期の皆様、いかがお過ごしですか。 3年I組の伊藤伸一です。還暦が過ぎ何かと老いを感じる今日この頃です。

さて、私はいま由利本荘市で開業医をしております。高校を卒業後に一浪して新宿にある東京医大に入学しました。大学では念願のバスケットボール部に入り、勉学に励むことなく部活動に熱中し、成績は低レベルで何とか昭和57年に卒業し、その後平成11年まで外科学教室で主に小児外科医として約20年間大学病院に勤務しました。平成7年から1年間肝臓移植と小児外科の臨床研修のため米国UCLAに留学したことは私と家族にとってとても貴重な人生経験になりました。 平成12年から秋田県由利本荘市旧大内町の片田舎の山奥で父親の後を継ぎ小さな診療所医師として働くことになりました。開業当初は知り合いの先生はほとんどおらず、何かを相談するにも大変苦労をしました。また、田舎ではほとんどすべての診療科の患者さんを診なければならず、小児外科という専門性はほとんど役に立ちませんでした。一番役に立ったのは出張先で覚えた内科、整形外科、皮膚科と小児科の知識でした。今でこそ総合診療医とか家庭医という専門医がもてはやされておりますが、帰郷してからそのような診療所医師として働いております。

モットーは地域に根ざした診療所であり、患者さんの病気を治すだけでなくその人が幸せに自分らしく生きていくことを支え、患者さんや家族の「ものがたり」に寄り添う医療です。また、かかりつけ医のひとつの仕事とし在宅医療にも力を入れています。 また、現在は由利本荘医師会副会長、秋田県医師会常任理事として両医師会の執行部で仕事をさせていただいております。ここ5年は在宅医療や地域包括ケア担当という役目が回って来たため、県内各所を回って話をする機会も増えました。そこでは同期の3年B組の秋田大学の中村順子さんと県の会議やイベントで顔を合わせることも多いです。幸いなことに、色々な人とのつながりが広がり、たいへん嬉しく感じております。

これから自分に残された人生はそう長くはないと思っておりますが、あと数年かけて自分がやり遂げたい事を述べさせていただきます。

1.みんくるカフェAkita 市民や住民の皆が集まり医療や健康について語り合うことのできる『場づくり』、それが『みんくるカフェAkita』です。「みんくる」とはみんなが来ることを意味します。このプロジェクトは、家庭医の東大の孫 大輔先生が平成22年8月に医療者でも一般の人でも誰でも参加できる医療・健康をめぐる対話の場づくりとして始まりました。街中のカフェなどに10~20人が集まり、フラット性を重視し、健康・医療をめぐる様々なテーマについて市民と医療者がともに学び対話する場を提供し、コミュニティの健康増進に貢献する活動です。市民・患者と医療者のコミュニケーションを促進し、より良い市民・患者 − 医療者関係の構築を目指しています。4年前に同士とともに孫先生の趣旨に賛同して秋田で『みんくるカフェ秋田』を代表として立ち上げカフェを継続しております。この企画が県内にもっと広がり気軽に健康・医療について相談したり、学んだりできる対話の場が広がれば良いと考えています(https://www.facebook.com/minnkuruakita/)。

2. あきた 森の保健室 秋田県の在宅医療、地域包括ケアの担当理事になってから、いろいろな方と出会うことができました。その中のお一人が秋山正子さんです。彼女は私たち秋田高校の先輩でNHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」にも出演された有名な訪問看護師です。『自分の人生がまもなく最期を迎えると知ったとき、あなたはどこで死にたいですか。どこで誰と生活したいですか。その日が来るまで、どうやって生きていきたいですか』と優しく語られ、彼女は新宿区にある都営アパートである戸山ハイツに「暮らしの保健室」というコミュニティの場、憩いの場所を作りました。そこにはアパートに住む高齢者、がん患者、認知症の患者さんたちが行き来し、安心とつながりを与えています。私も、このような保健室を自分の地域でも作りたいと考え、昨年の7月に皆が自由に集まり医療・介護・子育て等の相談ができる『あきた 森の保健室』を診療所に併設して立ち上げました。ここには専従の看護師が常駐しております。この森の保健室が地域の世代間の交流の場になって欲しいと考えております。是非、お暇なときにお立ち寄りください(https://www.facebook.com/morinohokenshitu/)。

3.ナラティブブック秋田(ナラティブとはそのヒトの物語という意味) 地域包括ケアシステムのなかで情報の共有は極めて重要であり、その人の情報をデータベース化して集約した在宅連携ツールが求められています。本来情報はその人個人のものです。具体的には本来その人のものである情報を本人、家族や各職種がICT上で確認できるシステム、それが在宅医療・介護連携ICTツール「ナラティブブック秋田(自分の物語手帳)」です。このICTツールのナラティブブックは個人情報をクラウド上で一元化し、情報はその人個人が認証した人だけがWeb上で見られるようにするものです。個人情報を個人が必要な人にのみ認証して開示するという点で、医療カルテや他の情報共有ツールとは異なり、ナラティブブックでは本人、家族、医師、薬剤師、看護師、介護士などだれでも簡単に入力できます。そのヒトの個人史、人生観、死生観、終末期における治療の希望(心肺蘇生術の希望の有無)等を自分手帳として書き込むことができるのも特徴です。このICT事業は国の財政支援制度の資金で運営し3年経過しました。

今後、秋田から全国への普及を目指しています(https://www.facebook.com/ナラティブブック秋田-197600707255437/)。 長文になりましたが、私の卒業後の物語や現在の状況を報告させていただきました。皆様、お時間がありましたら診療所やあきた森の保健室に立ち寄ってください。最後になりますが、AKS50の皆様の更なるご活躍とご健勝を心から願い、稿を終わりにさせていただきます。

コメント欄

中村順子 / 29 5月 2018 8:25am 
もはや秋田県の在宅医療を語る時、なくてはならぬ存在となった伊藤伸一先生、お世話になっております。
同期のよしみでいろんな頼みごとをして、ちゃっかり活用させていただいておりますが、多分目指しているところは同じと思いますので、今後ともよろしくお願いします!

大島昌良 / 7 6月 2018 2:47pm 
3年I組の大島です。昨年1年間寝たきりの状態だった父の最後を自宅で看取ることができました。身近で在宅看護に接し、改めて尊厳死について考えさせられました。一人取り残された母は、今老人施設におります。三度の食事付、入浴も面倒を見ていただき、また、年寄同士お友達になりその人たちの世話をしたり自分の居場所を見つけることができて、家にいる時とは違い健康になり笑顔で元気に暮らしております。このような施設もまたこれでいいものだと思いました。

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です